ジェラルド・アシャー 『世界一優雅なワイン選び』集英社文庫

■ワインの売買と飲用に評価点を持ち込む(アメリカ的)現象には、およそ意味がない。味覚という主観的な領域では、普遍的に当てはまる物差しなどありえないのだから。数字信仰は良いワイン造りにとって、危険なくらい有害だ。アメリカの小売業者は、自分では何の努力もせずに、出来合いの評価点を売上増の手段にしている。評論家は自分に優等賞を授ける権利があると勝手に思い上がっているのは、一面純情でもあるのだが、酒販店はこれにつけこんでいる。経験も足りず自信もない消費者は、評価点をあてにすれば優良なワインが手に入ると、これまた軽率に思い込んでいる。 (『世界一優雅なワイン選び』より抜粋)
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Posted by 加藤洋子 at
2008年08月26日18:34
│ワイン
ワインはビンに閉じ込められた謎である。

ジェラルド・アシャーの名言です。
イギリスに生まれ、1950年代にロンドンでワイン業界に。
きっかけは学生時代ロンドンの小さなワイン店でアルバイトをしていた頃、輸入元が突然ワインのヴィンテージを切替えた時、店長が両ヴィンテージを並べて試飲させてくれたことです。
アシャーは「比較試飲は、目のさめるような新しい体験であった。一生の仕事を見つけるにはほかにもっと奇抜な方法があるかもしれないが、この時こうして私は天職を探しあてた」。
その後40年(ワイン商は1987年に引退)、ロンドンからニューヨーク、サンフランシスコへ本拠地を移し、世界の優良ワインを探す旅へ。
★『世界一優雅なワイン選び』 ジェラルド・アシャー著 集英社文庫から、抜粋
○ 所詮ワインは、いくらアルコールやpH、残糖の量や度数を分析したところで、正体がつかめない。また、どこかのワイン評論家が、アロマと風味のなかにかぎつけたと称する、ベリー類やスパイスの類推もどきの一覧表も、当てにはならない。ワインのスタイルというものは、造り手の各人が過去の事例を導きの糸とし、現在持ちあわせる腕だけを頼りに、風土の環境条件に適応しながらこしらえるものなのだ。ワインを理解し、自分のものにするには、地図や雨量統計、産地別格付け表は、あまり助けにならない。どんなに凡庸なワインであろうと、単なる諸元表や分析数値を寄せ集めた総和を、断然上まわる。
■ヴィンテージの意義については、一般に誤解が広まっている。収穫年によって、ワインにはスタイルや品質に差が生じる。このスタイルと品質はどちらも定義しにくいものだが、世にあるヴィンテージ・チャート(作柄表)は、星の数や秀・優・凡といった一次元尺度で作柄に序列をつけるから、スタイルや品質の差はますますあいまいになる。特にブルゴーニュの場合、チャートの編者が、えてして大柄(ビッグ)な作年をもちあげるから、要注意だ。こんな作柄の年には、ブルゴーニュはむしろ失望を味わわされる羽目になる。大柄なワインなど、そもそもブルゴーニュのピノ・ノワールの得意とするところではない。暑くて乾燥した天候の影響で大柄になるときは、バランスを崩した兆候と見てよい。大柄さなど、かえってないほうが傑出したワインになることは、知る人ぞ知る事実である。
■ワインの売買と飲用に評価点を持ち込む(アメリカ的)現象には、およそ意味がない。味覚という主観的な領域では、普遍的に当てはまる物差しなどありえないのだから。数字信仰は良いワイン造りにとって、危険なくらい有害だ。アメリカの小売業者は、自分では何の努力もせずに、出来合いの評価点を売上増の手段にしている。評論家は自分に優等賞を授ける権利があると勝手に思い上がっているのは、一面純情でもあるのだが、酒販店はこれにつけこんでいる。経験も足りず自信もない消費者は、評価点をあてにすれば優良なワインが手に入ると、これまた軽率に思い込んでいる。
■このほど、カリフォルニア・ジンファンデルを150種('90と'91がほとんど)、私流にテイスティングした。ずらりと並べ、わかりよいように味のスタイル別にグループにしてみた。ところがすぐに気づいたのだが、結果的に私は産地別に、こちらドライ・クリーク・ヴァレー、あちらソノマ・ヴァレーといった具合に、机上で分類したことになった。もともとそんなつもりはなかったのに。・・・・・・
実際にはぶどうを州内各地から買い付ける生産者は、スタイルや味の差を心得ており、これを選択の手がかりにしている。ところがこれらの生産者にしても、地域的特徴がブレンド槽の中で消え放題にしていることがあまりに多い。私の試飲テーブルに並んだジンファンデルの中にも、明らかにこの手のものがあった。だからといって必ずしも魅力が劣るわけではないが、焦点がぼやけ、凝縮力が足りない。
しかし大部分のワインには、産地の刻印がはっきり認められた。
■ 樽材のオークとワインの関係をめぐって議論がかまびすしいが、どういうわけか事実に即した観点がなおざりにされている。むろんオーク風味をつけるだけのためにオーク樽は使われていないし、またそうであってはならない。オーク樽を用いる狙いは、瓶に詰めてしばらく寝かせた後、歴然とするワインの「変身効果」にあるし、それがまた本来の目的のはずだ。いったん樽をくぐり抜けると、ワインは微妙かつ複雑な変貌をとげる。しかしその場で何が、なぜ起こるか、あまりわかっていない。もっともらしい理論は少なからずあるが、明らかに矛盾しあうところもある。だがその効果は明白。樽で熟成させたワインはとげとげしさが減り、「丸み」がつく。諸成分がうまくまとまる―つまり、酸、タンニン、アルコールなどの調和がとれて一体になる。果実香(アロマ)と風味はいちだんと強まり、奥行きがでる(いわばワインの表面からでなく、内奥から滲みだす感じ)。とりわけ重要な点は、瓶熟の前の存樽期間こそ、ワインのアロマと風味を成長させ、いわゆる熟成香(ブケ)を生みだすということだ。
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Posted by 加藤洋子 at
2008年08月26日14:49
│ワイン